家庭用からプロ仕様まで、包丁にはたくさんの種類があります。
ここでは、最低限持っていたい包丁からプロが使う特殊な包丁まで網羅して32種類をご紹介!包丁を初めて購入する方も、専用の包丁の買い足しを考えている方も、これを見れば買うべき包丁が見つかるはずです。
包丁の主な種類と選び方について
まずは包丁の種類についてご説明いたします。
包丁は大きく分けると「和包丁」「洋包丁」「特殊包丁」の3種類に分類でき、それぞれ大きさや形によって、切るのに適した食材、不向きの食材があります。プロの料理人が多くの包丁を使い分けるのはこのためです。
ただ、一般家庭では何本もの包丁の種類を揃えて使い分けることは難しいので、それぞれの包丁の特徴と用途から数本選ぶのが普通です。そこまで包丁にこだわらないという方はポピュラーなものを、料理が趣味でこだわりたい方、料理人を目指している方、プロの方は、目的や用途に合わせ、適した包丁を探すのが良いでしょう。
家庭向きの和包丁
和包丁は日本がルーツの包丁です。和食は食材に合わせて包丁を使い分けることが多いので様々な種類があり、特に魚専用の包丁が多いのが特徴です。右利き・左利き用の包丁があるのも和包丁ならでは。
刃の断面は、横から刃先を見ると断面がカタカナの「レ」のように見える片刃構造になっているのが基本で、両刃は少数です。また、同じ食材を切る用途でも、地方によって包丁の名前や形が違うことがあります。
菜切包丁
昔ながらの野菜専用の和包丁です。刃は水平で幅が広いので、大根や白菜など大きな野菜を切りやすく、皮むきや桂むき、ぶつ切り、千切りなどに適しています。
刃は薄く幅広で、切っ先は四角い形をしていて、片刃が多い和包丁の中で両刃なのが特徴です。刃渡りは15cm~17cmが一般的。関東と関西で使われている包丁は少し形が違い、錆びにくい「黒打菜切(両刃)」など、刃の薄さや材質などによってもいくつかの種類があります。
出刃包丁
刃が太く重みがあり、魚を捌いたりおろしたりするのに最適な包丁です。大きな魚のうろこ取りや骨の処理、背開き、魚を骨ごとぶつ切りにする時などに使われます。
刃渡りは15cmもあればほとんどの魚を捌くことができ、もともとは魚用でしたが、現在では肉を切る用途で使う人もいます。また、頑丈そうに見える包丁ですが、片刃で薄いため、乱暴に扱うと刃こぼれしてしまうので注意が必要です。
小出刃包丁
小型版の出刃包丁です。小さな魚を捌いたり、背腹開きや三枚おろしをするときに使います。サイズ的にはあじ切り包丁と変わりませんが、基本は通常の出刃包丁と同じ使い方ができます。
プロ向きの和包丁
薄刃包丁/鎌形薄刃包丁
菜切包丁に似た形の和包丁。主に野菜の皮をむいたり野菜を切るのに使われます。切っ先が尖っているので飾り切りやそぎ切り、細工などにも活躍します。
刃が薄いので切れ味が良く、切り口もきれいに仕上がりますが、刃が欠けやすいのが難点。また、食材を切るのも包丁のお手入れにもコツがあり、家庭用というよりはプロ向けの包丁です。家庭用として使うのであれば、刃渡り18cmくらいがおすすめです。関西では先が尖り、鎌のような形をしている鎌形薄刃包丁が多く使われています。
刺身包丁(蛸引包丁・柳刃包丁・正夫包丁)
魚の切り身や刺身を作る時に使う刺身包丁です。
刃渡りは長く、先端が鋭く作られていて、切り口が美しいのが特徴です。主に関東で使われているのは「蛸引包丁」。蛸引という名前ですが、蛸専用の刺身包丁ではなく、刺身全般に使うことができます。関西では「柳刃包丁」「正夫包丁」と呼ばれる刺身包丁がよく使われています。刺身包丁は刃の長さを利用して引くように切るので、刃渡りは21cm~24cmくらいは必要です。
また、刺身包丁には、刃のすべてがひとつの鋼で作られた「本焼」や、鋼の中でも特に優れた材質を使用した「青鋼」など、一部の職人にしか扱えない高級品もあります。
身おろし出刃包丁/舟行包丁
魚をおろすことに特化した出刃包丁です。
出刃包丁よりも細身で軽くて使いやすく、三枚おろしや、刻むなどの野菜の調理にも使えますが、硬い骨の切断には適しません。舟行も同じです。
あじ切り包丁
小型の出刃包丁のひとつ。あじのような小さい魚をおろすために使います。同じ形状で小出刃包丁がありますが、それよりも板厚が薄く、身の薄い魚にも対応できるようになっています。
基本的に表面を磨かない黒打仕上げです。
鮭切り包丁
鮭のような大きな魚を捌くための大型の出刃包丁です。
通常の出刃包丁に比べると薄めに仕上がっており、劣化を防ぐために表面を磨かない黒打仕上げになっています。
貝裂包丁
貝刺専用の柳刃型包丁。刀身は短く薄いのが特徴です。
小さな貝を刺身にしたり、細かな細工に適しています。
ふぐ引包丁
ふぐの刺身や薄造りの刺身を作る時に使う包丁。
繊細なフグの調理に特化した構造になっているのが特徴です。
江戸型
鰻を裂くための専用の包丁。地方によって形状が違います。
「江戸型」は背開き用で、切っ先が切出型になっていて、柄尻は斜めに切られています。大きなものは鰻用、小型のものは「どじょう裂き包丁」とも言い、穴子やどじょうを裂くのに使用します。
「名古屋型」は細長く長方形で、裂く時に峰の先で鰻を傷つけないよう角がありません。
「京都型」は腹開き専用。鉈の形をしていて、峰の凸部分で目打ちを叩けます。「大阪型」も腹開き専用で、峰が厚く、切っ先は「江戸型」と同じ角度で柄尻まで地鉄でできています。
鱧しめ包丁
鱧調理専用の包丁。大阪型の鰻裂き包丁と同じ共柄で刃は厚く、力が入りやすい握りが特徴です。
鱧切り包丁
鱧など小骨の多い魚の骨切りをしたり捌くのに使う包丁。「骨切」とも呼ばれます。
刃渡り30cm前後と非常に大きく厚みもあるので、包丁の重さを利用して小骨を切り捌きます。また、刃は非常に鋭く、刃先は皮1枚を残して細かく切れるように薄い作りになっています。
寿司切包丁
巻き寿司や押し寿司を切るときに使う包丁。
刃は両刃で幅が広く、丸みを帯びていて、ご飯や具材を崩さないよう工夫された形をしています。刃渡りは24cm前後です。
麺切包丁
そばやうどんを切る包丁。1度の振り下ろしで1本の麺が均等に切れるように、刃渡りが長い独特な形になっています。
いくつか種類があり、「共柄・片刃」は刃渡り24cm~30cmくらい。「黒打」は刃渡り21cmくらいで薄手で軽く、両刃なので、女性にも扱いやすい包丁です。
蕎麦切包丁
蕎麦を切るための専用の包丁。
重みがあり刃渡りが広く、一度で1本の麺が切れるよう四角く水平な刃が付いています。
家庭向きの洋包丁
洋包丁は明治時代に西洋から入ってきた包丁です。肉を切ることを目的に作られた包丁なので、肉類を切るのに適したものが多く、主に西洋料理の調理で使われます。
刃は基本、断面が左右対称V字型になっている「両刃」構造です。現代の日本の家庭では、洋包丁の使用が一般的になっています。
三徳包丁
野菜、肉、魚と3つの食材に使えることから「三徳」という名前がついた万能包丁。「文化包丁」とも呼ばれています。和包丁の「菜切包丁」と洋包丁の「牛刀包丁」の利点を組み合わせて作られたので、大抵の食材を切ることができ、日常使いに最適。
最初に購入する1本としておすすめで、最もポピュラーな包丁です。
小型三徳包丁
三徳包丁を短く仕上げた包丁。刃先を丸めた小型三徳は子ども用の包丁としても人気があります。
切れる食材は限定されますが、触れただけでは手が切れないのでお子様が使っても安心です。
牛刀包丁
ヨーロッパから伝わった万能包丁。「洋刀」「シェフナイフ」とも呼ばれます。三徳包丁と比べると刃先が鋭く幅は狭いのが特徴で、肉の塊など体重をかけて押し切る場合などに便利です。
肉専用の包丁と思われがちですが、肉以外の食材も切ることができます。一般家庭で使うなら刃渡り20cm前後が最適。三徳包丁同様、最初に買う包丁としておすすめ。
ペティナイフ
牛刀包丁の小型版。野菜や果物の皮むき、肉や魚、野菜のカット、筋とりなどのほか、小回りがきくので大きな包丁では難しい細かい作業に適しています。
刃渡りは11cm~15cmと女性でも持ちやすいサイズ。あまり料理をしない方ならこれ1本でも十分です。
パン切り包丁
パンを切るための専用包丁。やわらかいパンも潰さずにきれいに切ることができます。
細長く、薄刃で波刃になっているのが特徴です。また、長く使用しても切れ味はあまり落ちません。
プロ向きの洋包丁
洋出刃包丁
牛刀と同じ形ですが、日本独自の洋包丁です。
和包丁の出刃包丁に比べ、刃の厚みがあり、魚をおろす、骨を叩く、甲殻類の殻を割る、冷凍食材を切るなど、肉、魚の大半の調理に対応できます。
骨スキ包丁(ボーニングナイフ)
骨付き肉から肉を切り取る包丁。刃の長さによって「ガラスキ」とも呼ばれます。骨に添って刃を動かすので、刃こぼれしないよう牛刀包丁よりも全体的に刃が厚く、形状は角型と丸型があります。大きな骨付き肉や鶏を丸ごと調理するときなどに便利で、本格的に料理をする方やプロに人気のある包丁です。
肉だけでなく、魚の調理などにも使用できます。
皮剥ぎ包丁(スキニングナイフ)
骨スキ包丁と同じように、肉と皮を切り分けるために使う包丁。
刃は薄めで刃先が切っ先に向かって反っていくのが特徴で、皮のみ切り離せる仕様になっています。
筋引包丁(カービングナイフ)
大きな肉のブロックを筋に沿って切り分け、筋のない部分だけを切り出す肉専用の包丁。
筋の曲線に沿って刃が動かせるよう、刃の幅は狭く薄くなっています。そのため、スライサーとして使用されることも。
腸裂包丁
牛の小腸を裂くために使用する食肉加工業者専用の包丁です。
先端部を小腸に刺し、そのまま左手で腸を引くことにより、連続して切り裂くことができます。
家庭向きの特殊包丁
特殊包丁という場合、いくつか定義があるようですが、一般的には和包丁・洋包丁には分類されない包丁が分類されます。
専用の用途を持つ包丁や、変わった形状の包丁などが挙げられます。
中華包丁
中国がルーツの包丁。中華料理では調理をほぼ1本の包丁でこなすため、通常の使い方のほか、包丁の重さを利用して、食材を叩く、骨を切る、潰すなど多くの使用方法があります。そのため、最初は使い勝手が良くないかもしれませんが、使い慣れれば色々な食材に対応できる万能包丁です。
薄手、中厚、厚手に分けられ、それぞれ適した用途は異なります。多くはプロの料理人が使っているものですが、本格的に料理をしたい方にもおすすめです。薄手は肉や野菜などの柔らかいものや飾り切りに。中厚は万能。厚手は包丁の重さを利用して主に骨を叩き切るのに使います。刃渡りは20cm~22cmくらい。
フルーツナイフ
果物専用の皮むきナイフです。皮をむきやすいように片刃仕上げになっているのが一般的。
テーブルや食卓でも使えるように、多くはサヤがセットになっています。
チーズナイフ
チーズ専用のナイフで、チーズが付かないように刃は薄く、切り離れを良くする工夫がされています。
飾り切り用に、刃にウェーブの入った糸ノコのような形状のものもあります。
サーモンナイフ
スモークサーモンをはじめ、ローストビーフやハムなどの薄切りに最適なナイフです。
刃の両側に楕円の窪みがあり、切り身が刃に付きにくくなっています。
プロ向きの特殊包丁
冷凍包丁
半解凍した冷凍食品専用の包丁。
まだ内部が凍っている可能性のある半解凍した食品や、冷凍庫から出したばかりの肉や魚などの食材を切るのに適しています。
大型万能包丁
乾燥させたもちを細かく切り分ける時や、すいかなど大きな果物を切る時の専用包丁。「もち切り」「すいか切り」と呼ばれることも。
刃渡りが長く長方形で、業務用などでは2人がかりで持って切る場合もあります。
おわりに
今回ご紹介した包丁は全部で32種類。包丁は、種類だけでなく、刃の材質やブランドで選ぶ方法もあります。包丁の材質の種類やおすすめのブランドについては、こちらの記事をご覧ください。
「普段使いで絶対活躍!あると便利なおすすめの包丁と選び方のポイント」
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